家族信託にかかる費用はいくら?安く抑える方法などをわかりやすく解説

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家族信託を契約し運用に至るまでには、信託内容や目的の確定から契約書作成など一連を専門家に依頼することが一般的ですのでその初期費用が発生します。
また当初に契約した信託の内容を変更する場合や終了する際にも専門家への相談と手続き費用が発生することは念頭に入れておく必要があります。
今回は家族信託契約から終了時の手続きに至るまでの手続費用や費用を抑えるために理解しておいていただく必要があることなどについて説明いたします。
家族信託でかかる費用の相場はどのくらい?
家族信託でかかる費用の目安になりますが、自身で手続きした場合と専門家に依頼した場合について確認しておきましょう。
■自分で手続きした場合の費用:20万円~
ご自身で家族信託の手続きを行うことが可能となるケースは、信託の内容が複雑ではなくごくシンプルなケースで、受託者をお願いしたい人物もあらかじめ決まっており、将来の相続人とのトラブルも予想されない場合などになります。
その場合発生する家族信託の費用は、公正証書作成費用や信託登記の手続き費用などが基本です。公証役場での費用は信託する財産金額によって異なります。
■専門家に依頼した場合:50万円~
家族信託の目的や財産内容、将来の相続時トラブル回避などその目的が複雑な場合は専門家への相談をおすすめします。
相談料と信託契約書作成費用、報酬などが発生します。専門家への報酬は信託財産の金額によりコンサルティング費用(相談料、報酬など)の金額が変わるところが一般的です。
また、不動産の有無によっても、法務局での登記が加わりますので費用が発生します。不動産がある場合は、司法書士報酬も併せての別途費用を想定しておきましょう。
上記費用の大きな差は、信託内容の複雑さ(難易度)や信託財産の金額と内容、手続きの範囲であることが一般的です。
家族信託にかかる費用の内訳
家族信託にかかる費用についてですが以下の項目があります。
■必要書類の収集(実費等):5000円〜1万円。戸籍謄本の収集や残高証明書発行手数料、郵送費用など。
■契約書作成費用:5万円〜。公正証書での契約書作成は信託財産の内容(金額)により異なります。費用の詳細は日本公証人連合のHPをご確認ください。
■信託登記:登録免許税は固定資産税評価額の0.3%〜0.4%です。(土地は0.3%)
■専門家への報酬金:10万円〜。信託財産評価額により基準を定めている専門家が多いです。依頼者よりご相談をお聞きして家族信託について進めていく場合に適切なアドバイスを行います。
目的に沿った家族信託契約書の作成を行い、それをもとに公証役場での信託契約書作成を行います。場合によっては、信託契約をご納得いただくためご家族への説明・交渉なども行います。
契約手続きにかかる費用
家族信託の契約手続きの流れは下記をご参照ください。
- 家族信託の目的と契約内容を家族で話し合う
- 話し合いで決めた内容で信託契約書を作成する
- 信託契約書を公正証書にする
- 信託財産を受託者の名義へ変更する
- 財産管理のための専用講座を開設する
- 家族信託を開始する事務手続きをする
費用の目安についてですが上記①〜⑥の過程で実費を含めた費用が発生します。
まずは①の家族信託の内容や目的についての話合いの段階で、専門家による財産調査や推定相続人となる人物の特定が必要な場合は、残高証明書の発行手数料や戸籍・住民票の取得などが発生します。専門家にアドバイスを受けて信託の内容と目的が決まったら、②・③の行程で、信託契約書を公証役場にて作成しておきましょう。
これは、信託財産が金銭や不動産である場合には、少なくとも金融機関や法務局では公正証書による信託契約書の提出を求められるケースが多いので費用の発生はありますが、正式な契約書を作成しておくことをお勧めします。
公正証書作成の際の公証役場の手数料は、信託財産の内容(金額)により異なります(費用の詳細は日本公証人連合のHPをご確認ください)。
契約後にかかる費用
家族信託の契約を行い信託がスタートすれば基本的には費用は発生しませんが、下記のようなケースでは契約後も費用が発生します。
■受託者への報酬を設定する:受託者の責任や管理に対して報酬を設定しておくことも可能です
■信託契約の内容を変更する:当事者間の合意により変更する場合には契約書の作成費用が発生。
■信託終了時の手続き:清算手続きにより信託財産を取得する帰属権者には一定の税金が発生。信託不動産がある場合は信託登記抹消・所有権移転登記費用など。
契約終了時にかかる費用
家族信託を受益者の死亡により終了する場合には清算手続きにより残った財産の引渡しを行います。
その際に「相続税」がかかります。信託財産に不動産がある場合には、「信託登記の抹消」及び「所有権移転登記」などの費用が発生します。
信託抹消登記は不動産1筆あたり1000円となっています。そのほかに、清算手続きや相続税の計算などを専門家に依頼する場合には専門家の相談料や報酬が発生します。
専門家に依頼した場合にかかる費用
家族信託は相談から信託契約書の作成に至るまで、法律の専門家にサポートを受けることをお勧めします。
相続や生前対策につよい弁護士や司法書士に相談するとより専門的ですが、信託の目的が税金対策や二時相続も含めた相談である場合には税務の知識も重要となります。
専門家へ相談すると相談料や報酬など費用が多くかかるのではないかと心配になることもあるかもしれませんが、先々の家族間のトラブル回避や税金対策を理解して手続きを行うことは非常に有効で、費用以上の効果が見込まれます。費用の詳細については以下をご確認ください。
■基本料金(家族信託コンサルティング費用+信託契約書作成費用)
信託財産評価額 | 基本料金 |
---|---|
1000万円未満 | 10万円 |
3000万円未満 | 15万円 |
5000万円未満 | 20万円 |
5000万円以上 | 0.4% |
*信託契約書を公正証書で作成する場合、公証人手数料が別途発生いたします。
家族信託でかかる可能性のある税金
家族信託の設計次第では贈与税、相続税、所得税、法人税、登録免許税、固定資産税などの税金が発生します。
■贈与税:受益者が委託者と同じ場合は財産は他者には映っていないので贈与税の発生はありませんが、委託者以外の第三者が受益者となる場合には、その受益権が贈与とみなされ、贈与税が課せられる場合があります。
■所得税:信託財産により生じる収益(賃貸収入や配当金など)は、受益者が取得したものとみなされますので、所得税が課税され受益者の所得として申告する必要があります。
■相続税:信託の委託者が亡くなった場合には相続税が発生しますので、信託財産の受益権が別の家族に移る場合には相続税が発生します。
■登録免除税・不動産取得税:信託財産として不動産を組み入れる際には不動産の名義変更により登録免許税が発生します。
家族信託を設計する際には、税金対策が重要です。特に贈与税と相続税の発生が近い日付で起こりうるような場合にはより慎重な設計が必要になります。
家族信託の費用を安く抑える4つの方法
家族信託にかかる費用をできるだけ最小限にしたい場合は下記の点に削減できるポイントがないか確認してすすめてみましょう。
- 公正証書ではなく私文書で契約する
- 信託財産を減らす
- 信託監督人は家族や親族にお願いする
- 自分で手続きを行う
公正証書ではなく私文書で契約する
家族信託の契約書を公正証書にする場合には、公証役場での手続きと公証人への手数料が発生します。
一方、契約書をパソコンなど自分で作成する私文書であれば、公証人の介入が不要なため手数料を抑えることにつながります。しかしながら私文書は公正証書よりも証拠能力や証明力、信頼性は低くなりますので注意が必要です。
公正証書作成の際の公証役場の手数料は、信託財産の内容(金額)により異なりますので、詳細は日本公証人連合のHPをご参照ください。
信託財産を減らす
複雑な信託内容にすると、専門家の報酬や契約書の作成費用も高額になります。受益者の数を減らし、信託の目的をシンプルにする事で手続きも簡略化されコストも抑えられます。
また、信託の期間を長期には設定しないようにしておき、受託者への管理費などコストを最小限にする事も費用対策に繋がります。
信託財産を極力最小に設定し発生する費用を抑えることは可能ですが、信託の目的を達成することが第一ですので、後々の信託契約内容の変更により追加費用が発生しないように考慮された信託計画をたてることも重要です。
信託監督人は家族や親族にお願いする
信託監督人を家族以外にお願いする場合にはその報酬が発生します。報酬額は信託財産の規模や手間により異なりますが、通常は一定の管理費を支払います。
信託監督人は受託者が信託契約を適切に実行しているかをチェックする役割ですので、他の家族のメンバーにお願いすれば報酬を低額に設定するなど工夫して、管理費の全体を抑えることができます。
自分で手続きを行う
必要な書類の準備や信託財産のリストアップなどを自身で行うと専門家のへの相談時間や調査時間が短くなり相談料や専門家へ支払う相談料の削減につながります。
また簡単な手続きの一部は自身で行うことが可能なものもありますので意識しておくと良いかもしれません。
ご自身で全てを行う場合は、信託契約書の作成から登記、信託口座開設まで一連の作業が連続で発生します。
法的知識への理解が難しい場合はできるだけ専門家のアドバイスを受けて手続きをすすめましょう。
家族信託を自分で手続きする場合の注意点
家族信託をご自身で手続きを行なっていくことは時間と手間がかかりますが、コスト削減や柔軟な対応が可能となるという点が魅力です。
一方で、ご自身と他の家族にも関係する法律行為でもあるので、多方面からの専門的知識とその理解が重要です。
とくに、家族信託の契約書は私文書であることでその後発生する登記や口座開設手続きの際に受付けられないことなどが想定されます。
ご家族の理解が得られ、目的達成に向けてせっかく準備する契約書ですので、運用開始に向けての手続の段階で時間を取られることがないように当初から法的強制力のある契約書作成を行なっておくことをお勧めします。
家族信託を専門家に依頼した場合の費用シミュレーション
「この街の家族信託」では、コスト面も意識した家族信託の費用をご提案しています。何よりも相続事件において経験豊富な弁護士が司法書士の資格を有していますので、不動産がある場合の手続きがワンストップで可能となります。
依頼者が高齢になった際の生活状況を想定し希望に沿った信託の設計と他の家族へのメリット・デメリットをできるだけ細やかに説明しご理解いただけるようにはからいます。
費用の目安は信託財産によって異なりますが下記をご参照ください。
■基本料金(家族信託コンサルティング費用+信託契約書作成費用)
信託財産評価額 | 基本料金 |
---|---|
1000万円未満 | 10万円 |
3000万円未満 | 15万円 |
5000万円未満 | 20万円 |
5000万円以上 | 0.4% |
*信託契約書を公正証書で作成する場合、公証人手数料が別途発生いたします。
家族信託の費用についてのQ&A
家族信託で毎年かかる費用はありますか?
家族信託は一度設計すると信託財産の内容によって下記のような費用が発生します。
受託者への報酬:受託者が家族でない場合には必ず発生します。信託財産の金額によって異なります。また受託者が家族の場合には報酬の設定は自由です。無報酬にすることも可能ですが、業務が複雑で長期にわたる場合には、ある程度の報酬を設定しておくほうが後々のトラブル回避につながります。
信託監督人への報酬:信託監督人を設定する場合は、受託者が適切な管理を行なっているかを監督する役割ですので一定の報酬が発生します。信託監督人を家族の他のメンバーにお願いする事ができれば報酬を低額にすることも可能です。
不動産管理費:信託財産に不動産が含まれる場合は維持管理費が発生します。賃貸物件がある場合には修繕費や管理会社への委託費用も想定しておきましょう。
税金(所得税・固定資産税):信託財産から得られる収益がある場合は所得税が発生します。その他、不動産の固定資産税や都市計画税もありますので、信託財産に組み入れを行なって、受託者が信託財産の中から管理と支払いができるようにしておきましょう。
その他:銀行手数料、口座維持費、振り込み手数料、保険料など
家族信託にかかる費用や税金は誰が払うべきですか?
家族信託に関わる税金の支払いは、信託の形態や関与する役割によって支払うべき人物が異なります。
所得税:信託財産が生み出す収益(賃貸収入、利子、配当など)はその収益は受益者の所得とみなされるため受益者が支払います。
固定資産税:信託財産に不動産が含まれる場合は通常、管理者として受託者が支払います。受託者の固有財産からの支払いではなく。信託財産から支払うことが一般的です。
贈与税:家族信託の内容によっては、信託財産の移転や受益権の取得が贈与とみなされる場合があり、受益者が支払います。
信託財産が賃貸不動産の場合、家族信託にかかる費用を経費にできますか?
信託財産に収益不動産がある場合には、家族信託にかかる費用(専門家への報酬や公正証書の手数料など)を経費として計上することは可能でしょうか。
家族信託導入の目的が、「賃貸経営の長期的安定化のための認知症対策」である場合は、不動産賃貸業を円滑に継続するための必要経費として計上できる可能性があります。
一方で、不動産以外にも他の財産を信託財産に組み込む場合は、賃貸経営の長期安定化だけが目的ではないと見なされ、家族信託にかかる費用の全額を経費計上することは難しいと判断される場合があります。
任意後見制度と家族信託ではどちらの費用が高いですか?
家族信託と任意後見制度の費用について比較します。どちらの制度でも初期費用は発生します。専門家への相談と公正証書での契約書作成の際には費用が発生します。
下記は目安になりますが、最低限の費用の発生は想定しておきましょう。
■家族信託と任意後見の費用比較
費用項目 | 家族信託 | 任意後見 |
---|---|---|
初期費用 | 30万円~100万円(契約書作成、登記) | 10万円~20万円(公正証書作成、相談料) |
不動産登記費用 | 5万円~20万円 + 登録免許税(評価額の0.4%) | 不動産登記は不要 |
ランニングコスト | 受託者や監督人の報酬:年間0~数十万円 | 後見人報酬:年間約36万円~60万円 |
監督人の報酬 | 年間数十万円(専門家の場合) | 月額1万円~3万円(任意後見監督人) |
税務申告や管理費用 | 税務申告費用、専門家費用が発生する可能性 | 基本的に税務申告は不要 |
信託する財産の金額にもよりますが、初期費用としては家族信託の方が高額になります。
その後のランニングコストでは、後見人報酬、特に任意後見監督人への報酬は裁判所で決定されますので年間単位での費用発生を見込む必要があります。
家族信託と任意後見の制度の違いについてはこちらをご確認ください。
費用など家族信託については、弁護士西田幸広の「この街の相続」へご相談ください
家族信託はご家族の間での十分な話し合いのもと、最低限、公証役場で家族信託契約を作成すれば専門家への相談料や報酬を大幅に削減することが可能です。
しかし、財産内容や家族の関係はもとより、その先の相続発生も見据えた法務や税務に関する知識は必要不可欠です。
また、契約内容が適切でなければ信託の目的が達成されないだけではなく、法律上、無効となるリスクもあります。
一見、シンプルな家族信託の設計で専門家の関与は必要ないと思われるケースでも、他の制度利用の方が本来の目的に沿う場合もありますので依頼者が広い視野を持って選択するためにも専門家への事前相談は必要です。
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