熊本で遺言書を書き直すには?撤回・変更の方法と失敗しないための注意点

一度つくった遺言書は、あとから何度でも書き直すことができます。家族構成が変わった、財産の内容が変わった、気持ちが変わった——どんな理由であっても、遺言者が元気なうちであれば自由に変更できるのが遺言のルールです。熊本市や八代市の当事務所にも「以前つくった遺言をそのままにしていてよいのか」というご相談が寄せられます。この記事では、熊本で遺言を書き直すときの具体的な方法と、やってしまいがちな失敗について整理します。
熊本で遺言書を書き直す3つの方法
遺言の書き直しには、大きく3つのやり方があります。
1つめは、新しい遺言書をつくることです。遺言が複数あるとき、内容が食い違う部分については日付の新しいほうが優先されます(民法1023条)。もっとも一般的で確実な方法です。
2つめは、新しい遺言の中に「前の遺言をすべて撤回する」と書き入れることです。撤回とは、以前の遺言の効力をなくすという意思表示のことです。この一文があれば、古い遺言との関係があいまいにならず、相続人が読んだときに迷いません。
3つめは、自筆証書遺言の原本を破棄することです。自分の手元で保管している自筆証書遺言を破り捨てたり、線を引いて消したりすれば、その部分は撤回したものとして扱われます。ただし「捨てたつもり」が家族に伝わらず、あとから見つかって混乱するケースもあるため、新しい遺言をつくり直すほうが安全です。
公正証書遺言を書き直すときの注意点
公正証書遺言は、原本が公証役場に保管されています。手元にある正本や謄本を捨てても、原本が残っている以上、それだけでは撤回にはなりません。書き直したいときは、あらためて公証役場で新しい公正証書遺言を作成し、その中で前の遺言を撤回する旨を明記するのが基本です。熊本県内には熊本地方法務局管内の公証役場があり、事前に公証人と内容を打ち合わせたうえで、証人2名の立会いのもとで作成します。
なお、新しい遺言は自筆証書でも公正証書遺言を撤回できます。ただし、自筆証書は形式の不備で無効になるリスクや、保管中に紛失するリスクがあります。せっかく公正証書でつくった遺言を、形式不備の自筆遺言で上書きしようとして混乱を招く例もあるため、公正証書は公正証書で書き直すことをおすすめします。
書き直しで失敗しやすいケース
実務でよく見かけるのは、次のようなつまずきです。
古い遺言をそのまま残してしまう。撤回の一文を入れずに新しい遺言をつくると、食い違う部分だけが新しい遺言で上書きされ、食い違わない部分は古い遺言が生きたままになります。結果として、どの財産が誰に渡るのかを相続人が読み解けず、争いのきっかけになります。
一部だけを手書きで加筆・訂正する。自筆証書遺言の訂正には、変更した場所を指示し、変更した旨を付記して署名し、変更箇所に押印するという厳格な方式があります。方式を満たさない訂正は無効となるため、実務では全文を書き直すのが確実です。
判断能力が落ちてから書き直そうとする。遺言をするには遺言能力が必要です。認知症が進んだ後の書き直しは、あとから「そのとき理解できていたのか」と争われる火種になります。見直しは元気なうちに、が鉄則です。
どのタイミングで見直すべきか
遺言は一度つくって終わりではなく、節目ごとの点検が大切です。相続人が亡くなった・生まれた、子や孫が結婚した、不動産を売却または購入した、事業を後継者に引き継ぐことが決まった、相続税や登記のルールが変わった——こうした変化があれば内容が実情に合っているか確認してください。とくに相続登記の申請が義務化された今、不動産の記載が古い遺言は、相続人の手続きの負担を大きくします。目安として、3〜5年に一度は読み返すことをおすすめします。
まとめ
熊本で遺言書を書き直すときは、(1)日付の新しい遺言をつくる、(2)前の遺言を撤回する一文を入れる、(3)自筆証書は原本を破棄する、という3つの方法があります。公正証書遺言は原本が公証役場にあるため、手元の正本を捨てても撤回にはならず、あらためて公正証書で作り直すのが安全です。古い遺言を中途半端に残すことが、いちばんの争いのもとになります。家族構成や財産に変化があったときは、遺言の内容が今の実情に合っているか点検してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事情に応じた判断は専門家へのご相談をおすすめします。相続・家族信託に関するご相談は、この街の相続(弁護士・司法書士 西田幸広)までお気軽にお問い合わせください。
