熊本で遺言を残すなら遺言執行者も決める?役割と選び方・費用の目安

熊本で遺言書を作ろうと調べていくと、「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」という言葉に行き当たります。結論から言えば、遺言書を残すのであれば、遺言執行者も遺言書の中で一緒に指定しておくのが原則おすすめです。指定しておかないと、亡くなったあとに残されたご家族が家庭裁判所へ選任の申立てをすることになったり、相続人全員の署名押印を一つひとつ集めて手続きを進めることになったりして、せっかくの遺言書が「書いたのに動かない」状態になりかねないからです。ここでは、遺言執行者の役割と選び方、費用の目安を整理します。
遺言執行者とは?遺言の内容を実際に「実行する人」
遺言執行者とは、遺言書に書かれた内容を実現するために、相続財産の管理や必要な手続きを行う人のことです。民法上、遺言執行者は相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を持つとされており、その行為の効果は相続人に及びます。
具体的には、相続人や受遺者(遺贈を受ける人)への通知、財産目録の作成と交付、預貯金の解約・払戻しと分配、不動産の名義変更(相続登記や遺贈の登記)、株式や有価証券の名義変更などを担います。遺言で子どもの認知をする場合や、相続人の廃除・廃除の取消しをする場合には、そもそも遺言執行者でなければ手続きができません。
逆に、遺言執行者がいなくても手続き自体は進められる場面もあります。ただしその場合、金融機関や法務局から相続人全員の関与を求められることが多く、遠方に住むご家族がいると書類のやり取りだけで数か月かかることも珍しくありません。
熊本で遺言を作るとき、執行者を決めておくメリット
第一に、手続きの窓口が一本化されます。八代や熊本市に不動産があり、相続人は福岡や関東にお住まいというケースでも、遺言執行者が代表して法務局や金融機関とやり取りできるため、ご家族が何度も帰省せずに済みます。
第二に、相続人どうしの摩擦を減らせます。遺言の内容に不満を持つ方がいても、執行者が法律に従って淡々と手続きを進めるため、「誰かが勝手に動いている」という不信感が生まれにくくなります。
第三に、時間の節約になります。指定がない場合、利害関係人が家庭裁判所へ遺言執行者選任の申立てをする必要があり、申立ての準備と審理でさらに時間がかかります。熊本県内であれば熊本家庭裁判所やその支部が窓口となりますが、あらかじめ遺言書で指定しておけば、この段階をまるごと省けます。
遺言執行者は誰に頼む?家族・専門家・法人の選び方
遺言執行者になれるのは、未成年者と破産者以外であれば、個人でも法人でも構いません。相続人の一人を指定することもできます。上の図解のとおり、選択肢は大きく3つです。
家族・親族に頼む場合は、報酬をかけずに済むのが利点です。財産が預貯金中心で、相続人の関係が円満なケースには向きます。一方で、戸籍謄本の収集や平日の金融機関回りは想像以上に負担が重く、相続人の一人が執行者になると他の相続人から公平性を疑われることもあります。
弁護士・司法書士などの専門家に頼む場合は、不動産や自社株が含まれる、相続人の関係に不安がある、遺留分(一定の相続人に保障された最低限の取り分)をめぐる話し合いが予想される、といったケースで力を発揮します。手続きの正確さに加え、感情的な対立の緩衝材になる点も大きな利点です。
信託銀行などの法人に頼む場合は、担当者の高齢化や死亡を心配せずに済みます。ただし最低報酬額が設けられていることが多く、遺産の規模によっては割高になります。
なお、指定した人がご本人より先に亡くなることもあり得ます。予備の遺言執行者を併せて指定しておくと、より確実です。
遺言執行者の費用の目安と、依頼するときの進め方
専門家に依頼する場合の報酬は、遺産の額に応じて決まるのが一般的で、実費(戸籍取得費用、登録免許税、郵送費など)は別途かかります。金額は依頼先や遺産の内容によって幅がありますので、遺言書を作る段階で見積りを確認しておくと安心です。報酬の定め方を遺言書自体に書いておくこともできます。
進め方としては、(1)財産と相続人を洗い出す、(2)誰に何を残すかを決める、(3)その内容を実行できる遺言執行者を決める、(4)公正証書遺言として作成する、という順番が現実的です。公正証書にしておけば、方式の不備で無効になるおそれが小さく、家庭裁判所の検認も不要なため、執行者が動き出すまでの時間を短縮できます。
すでに遺言書を作成済みで執行者の記載がない場合でも、新しい遺言書を作って執行者を追加すれば対応できます。日付の新しい遺言書が優先されるため、内容が抵触する部分は後の遺言が効力を持ちます。
まとめ
遺言執行者は、遺言書を「紙」から「実際の手続き」へ橋渡しする役割を担います。熊本で遺言を残すなら、内容を決めるのと同じくらい、それを誰が実行するかまで考えておくことが、残されるご家族の負担を減らす近道です。家族に頼むか、専門家に任せるか、法人に依頼するかは、財産の内容と相続人の関係によって適した答えが変わります。予備の執行者を指定しておくことも忘れないでください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事情に応じた判断は専門家へのご相談をおすすめします。相続・家族信託に関するご相談は、この街の相続(弁護士・司法書士 西田幸広)までお気軽にお問い合わせください。
