信託監督人とは?家族信託で必要になるケースと選び方・費用の目安

家族信託について調べていると「信託監督人」という言葉が出てきます。聞き慣れない役割のため、必ず置かなければならないのか、誰に頼めばよいのか、費用はどのくらいかかるのかと迷われる方は少なくありません。この記事では、信託監督人とは何をする人なのか、どのような家族信託で置くべきなのかを整理してお伝えします。
信託監督人とは?受託者を見守る第三者のこと
信託監督人とは、受益者(信託から利益を受け取る人)に代わって、受託者(財産を管理する人)がきちんと契約どおりに財産を管理しているかをチェックする第三者のことです。信託法に定められた役割で、信託契約書のなかで指定して置くのが一般的です。
家族信託では、たとえば父親が委託者兼受益者となり、長男が受託者として自宅や預貯金を管理する形がよく使われます。受託者には帳簿をつけて報告する義務がありますが、報告を受ける受益者本人が高齢になり判断能力が落ちてくると、その報告が正しいかどうかを自分で確かめられなくなります。そこを補うのが信託監督人です。
信託監督人は、受託者から財産状況の報告を受け、通帳や帳簿を確認し、契約の目的から外れた使い方がされていないかを見ます。問題があれば是正を求め、必要に応じて受託者の解任を裁判所に申し立てることもできます。あくまで監督する立場であって、財産そのものを管理したり処分したりする権限はありません。似た役割の「受益者代理人」は、受益者に代わって意思表示までできる点で権限が広く、性格が異なります。
信託監督人は必ず置かなければならないのか
結論からいえば、信託監督人を置くことは法律上の義務ではありません。実際、親子二人だけのシンプルな家族信託では置かないケースも多くあります。受益者本人がしっかりしていて、受託者との信頼関係にも不安がないのであれば、監督人を置かずに始めても問題はありません。
ただし、家族信託は十年、二十年と続くことを前提にした仕組みです。契約時には元気だった受益者が、途中で認知症になることは十分に起こりえます。そのときに「誰も受託者を見ていない」状態になると、悪意がなくても管理があいまいになり、後から他の相続人との間で争いになることがあります。将来の変化まで見据えて判断することが大切です。
信託監督人を置いたほうがよいケース
次のような事情がある家族信託では、信託監督人の設置を前向きに検討する価値があります。
1. 受益者が高齢で、認知症の心配があるとき
監督人がいれば、判断能力が落ちた後も受託者の管理が第三者の目に触れ続けます。
2. 受託者以外の相続人が不安を感じているとき
兄弟のうち一人だけが受託者になる場合、他の兄弟から「使い込んでいるのではないか」と疑われることがあります。第三者が定期的に確認していれば、受託者にとっても身を守る材料になります。
3. 不動産や自社株など、財産の内容が複雑なとき
判断に迷う場面が多く、専門家の目が入ることで受託者自身も安心して管理できます。
障がいのあるお子さまの「親亡き後」を支える信託のように、受益者が自分で権利を主張しにくいケースでも、監督人の役割は重くなります。逆に、財産が預貯金だけで家族全員が内容に納得している場合は、費用をかけてまで置く必要性は高くありません。
信託監督人の選び方と費用の目安
信託監督人には、弁護士や司法書士などの専門家のほか、親族や知人がなることもできます。ただし、その信託の受託者本人や未成年者は就任できません。
親族に頼めば費用は抑えられますが、家族のなかの力関係が働いて監督が形だけになることがあります。中立性と継続性を重視するのであれば、専門家に依頼するほうが安心です。とくに家族間にすでに温度差がある場合は、外部の第三者であること自体に意味があります。
費用は依頼先や財産の規模、報告の頻度によって幅がありますが、専門家に継続的に依頼する場合は月額数千円から数万円程度の報酬を設定するのが一般的です。信託は長期にわたるため、初期費用だけでなく毎年のランニングコストも含めて無理のない設計にしておきましょう。
なお、契約時には置かずに「必要が生じたときに信託監督人を選任できる」旨を契約書に定めておく方法もあります。当面は費用をかけたくないが将来に備えておきたい、という場合の現実的な選択肢です。
まとめ
信託監督人は、受益者に代わって受託者を見守る第三者です。設置は義務ではありませんが、受益者の判断能力に不安がある場合や、他の相続人との関係に配慮が必要な場合には、家族信託を長く安全に続けるための支えになります。受託者を疑うための仕組みではなく、受託者を無用な疑いから守る仕組みでもあるという点は、ご家族で話し合ううえで意識しておきたいところです。契約書を作る段階で、将来の変化まで見越して設計しておきましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事情に応じた判断は専門家へのご相談をおすすめします。相続・家族信託に関するご相談は、この街の相続(弁護士・司法書士 西田幸広)までお気軽にお問い合わせください。
